どうもこんにちは。ヨジチチでございます。
つい先日ほとんど見ないテレビをなにげなく見ていると、深夜枠ではありましたが『標準貨物自動車運送約款等の改正』についてのCMが流れているのを目にしました。
標準貨物自動車運送約款等の改正概要:全日本トラック協会リーフレット
運送業の料金についてピンポイントでCMを流すのは初めて見たので、ある程度は行政としての「本気度」のようなものは垣間見えたのかな?と思います。
運送業の現状
少しずつ、「まとも」になってきている運送業ですが、依然として薄利であることには明白です。
私の記事では、この表をしつこいくらいに載せていますがご了承くださいw
全体の営業利益率ですら0.2%(5憶だと100万円)となっており、少しの影響で簡単に崩れ落ちる状況には変わりありません。
しかも運送業全体の9割以上は50台以下で営業しており、ここだけで言えばいまだにマイナス域ですね。
私の会社もこの範囲に余裕で入りますが、溢れ出るやる気で営業利益率10%は出せると思い込んでいます!
昨今では運送料金の交渉を行う企業も増えてきておりますが、うまくいかず四苦八苦している企業も多いことでしょう。
トラックの原価を知る(原価計算)
取り組んでいる企業は増えていますが、特に20台以下の企業でうまくいっていない原因の1つとして、『原価を知らない』ことがあります。
例として、運送料金を現状の3万円から4万円に上げてもらう交渉の席を設けてもらったが、資料は何も用意せず「燃料や人件費の高騰、拘束時間の短縮の影響で経営が厳しく現状の3万円から4万円に上げていただけませんか?」と荷主へ持ち掛けたらどうだろうか?
言ってることに理解はできるはずですが、月にその運行を10回行っているとすると、荷主から見れば全く同じことをしてもらって月に10万円のコストアップ、年間では120万円はかなり痛いとこで、簡単に「うん。いいよ。」とは言えません。担当者であれば上司へ話を上げるでしょう。
ですが、そこには1回1万円の値上げに対する明確な数字はありません。
担当者は上司を説得する材料がないので、こうなります。
担当者「〇〇運送さんが運賃を3万円から4万円上げてほしいと依頼がありました。燃料や人件費の高騰、拘束時間の短縮の影響で経営が厳しいらしいです。」
上司「今、運送業厳しいみたいだからねー。ついにうちにも来たか。で、その根拠になる資料とかないの?はい上げますってわけにはいかないよね。」
担当者「話だけでなにもいただいてません。」
上司「じゃあ。根拠も弱いし他の運送会社探すのもめんどうだし、一応受け入れた形で1,000円だけ応じて囲っとこうか。」
結果的に1,000円のアップとなりましたが、希望額とは9,000円の差があり失敗?とはいかないまでも成功とは言い難い微妙な感じです。
テクニックとして5,000円アップを狙って1万円の提案をすることもあるでしょうが、テクニック的なことを言い出すときりがないので素直に微妙な結果とします。
トラック原価計算の方法
以前にこの記事を書きましたが、今回はもっと具体的なところになります。
『トラック 原価計算』で検索すれば、いろいろなテンプレートも出てくるので好みのものを使えばいいと思いますが、会社により項目が違うので個人的には、参考程度に見て自分で作成することをオススメします。
やり方として、まずは『変動費』と『固定費』に分類します。
ちょいちょい自社の数字も入れて解説します。
トラック変動費
変動費の項目として一般的なものは軽油(燃料費)、オイル(油脂費)、修理(修繕費)、タイヤ(タイヤ費)、尿素(尿素費)くらいでしょうか。
変動費、固定費ともに最低限車種別(軽貨物、2t、4t、8t、10tなど)に分け、1km当りの原価を計算しましょう。
※冷蔵車などの特殊車両を細分化することで、さらに正確な数字が出ます。
基本的に税抜きの数字を入力しましょう。(軽油税だけは入れています。)
出来るだけ年間の数字を使用しましょう。
軽油(燃料費)
- 走行距離÷軽油量=燃費
例:9万km÷3万L=3km
- 軽油単価÷燃費=1km当りの軽油原価
例:120円÷3km=40円
オイル(油脂費)
- オイル代÷交換距離=1km当りのオイル原価
オイル代は、オイル量×単価+工賃
例:(30L×300円)+3,000円=12,000円
12,000円÷4,000km=3円
修理(修繕費)
- 修理÷走行距離=1km当りの修理原価
修理は車検整備+3カ月点検費用+一般整備
例:車検整備20万円+3カ月点検費用10万円+一般整備5万円=35万円
修理35万円÷9万km=3.9円
タイヤ(タイヤ費)
- タイヤ÷交換距離=1km当りのタイヤ原価
タイヤは、必要タイヤ数×単価+工賃
例:14本×2万円+4万円=32万円
32万円÷4万km=8円
尿素(尿素費)
- 走行距離÷尿素量=尿素燃費
例:9万L÷1,500L=60km
- 尿素単価÷尿素燃費=1km当りの尿素原価
例:70円÷60km=1.2円
1km当りの変動費合計
軽油 40円
オイル 3円
修理 3.9円
タイヤ 8円
尿素 1.2円
合計 56.1円 と、なります。
次に『固定費』を計算していきますが、固定費に関しては会社により項目が全然違いますので、ポイントだけ抑えて書いておきます。
トラック固定費
主な固定費として車両費、自動車取得税、重量税、自動車税、自賠責、車両保険、貨物保険、人件費、家賃などがありますが、そのほかにも水道光熱費、通信費と、上げればきりがないくらいあるので割愛します。
固定費に関しては1km当りの計算ではなく、時間当たりの費用を算出します。
そのために、まずは月1台当りにどの程度固定費が必要か見ていきましょう。
車両費
新車で購入すると、大抵の場合リースか借入だと思います。
ここを基準にするとキャッシュともリンクするので、個人的には理想的だと思っていますが、年数の設定は3年でも7年でも可能です。
短くすると原価が増える、長くすると原価が下がることだけ理解していれば問題ありません。
- 車両費÷リース・借入期間=月当りの車両費
例:1,200万円÷60回(5年)=20万円
自動車取得税
自動車取得税も上記と同じ期間で設定します。
- 自動車取得税÷60回(5年)=月当りの自動車取得税
例:12万円÷60回(5年)=0.2万円
重量税、自動車税、自賠責
これらのものは購入時、車検時に1年間一括で支払うので月割で算出します。
※購入時は1年とは限らない。
- (重量税+自動車税+自賠責)÷1年(12回)=月当りの重量税、自動車税、自賠責
例:15万÷1年(12回)=1.25万円
車両保険、貨物保険もほぼ同様の方法で算出できます。
人件費
固定給で月の変動がない場合には簡単に算出できますが、歩合や残業代が固定ではない場合には、その部分は変動費として算出します。
健康保険、介護保険、厚生年金、雇用保険、労災保険など会社負担がある費用は人件費に含めます。
独自の福利厚生を入れても可。
全体的に固定費はどこに何が入っているか理解できていれば、ある程度自由にしてもいいと思います。
- (全体ドライバー+それ以外の運送にかかる人件費+管理者)÷車両数=月当りの人件費
例:(400万円+20万円+70万円)÷10台=49万円
家賃
自社所有の場合には固定資産税を1年で割って算出する。
- (駐車場+駐車場+倉庫+事務所)÷車両数=月当りの家賃
例:(10万円+10万円+10万円+5万円)÷10台=3.5万円
雑費
その他の細かい費用はここにまとめます。(細分化するとわかりやすい)
雑費、間接費、その他と項目は自由に設定しましょう。
- 雑費÷車両数=月当りの雑費
10万円÷車両数=1万円
変動費・固定費はこれで完了だが、これで終わりではない!
変動費と固定費の原価が出ましたので、まとめてみましょう。
- 変動費
軽油 40円
オイル 3円
修理 3.9円
タイヤ 8円
尿素 1.2円
合計 56.1円
- 固定費
車両費 20万円
自動車取得税 0.2万円
重量、自動車税
自賠責 1.25万円
人件費 40万円
家賃 3.5万円
雑費 1万円
合計 65.95万円
年間走行距離が9万kmなので、月換算で7,500kmとなり1か月の運送原価は
変動費(56.1円×7,500km)+65.95万円=108万250円となりました。
しかし!まだこれでは終わりません!
あくまで1か月の原価がこれ!というだけで、利益も実車稼働も入っていません。
長くなったので今回はこのあたりにします。次回をおたのしみに!